百科事典『エルナサーガ全集』

かの偉大なる時代の物事をここにまとめる。なお、呪文の詠唱に関しては不明なところが多く、判明した部分のみ記述してある。(学者ノーリン、ハールヴダン共著)


☆あ行☆
・アーサトゥアル
 ノルズ山のふもとに興された王国。アーサトゥアル王家は勇者の末裔とされるが真偽の程は定かではない。その伝説を後ろ盾に世界の盟主を名乗り侵略を始める。ほぼヴァーリに乗っ取られたような状態になる。エルナの祖国。

・アンサズ
 ハラルド王の治める王国でシャールヴィの祖国。後にアーサトゥアルによって滅ぼされ、生き残った人々は王妃の生国サンドヴィークのウルの砦に逃げ延びる。その後グートランドと同盟を結ぶことでアーサトゥアルと戦う。

・凍凛波(イスカルダストローム)
 攻撃魔法。その名のとおり激しき冷気によってダメージを与える。

・陣風竜(イルドラーク)
 短呪系最強の魔法。風の魔法で、詠唱が短いためにとっさの場合に良く使う。
「あまねく地の風よ 百万の剣となり 矢となりて 吹け 陣風竜(ブローサ イルドラーク)」

・女王の親衛隊(ヴァルキリヤ)
 グードランドの精鋭竜騎士。女性のみの部隊と思われる。幼いころから男のように訓練されてきているため女と侮れば即命を落とすこととなるだろう。

・風針(ヴィンナゴート)
 シャールヴィが魔精霊の入った球を破壊するのに使った魔法。名前のとおり風を針のようにして突き刺す魔法と思われる。風針(ヴィンシーノール)と漢字は同じだが、さらに弱いものと思われる。

・風斬首斧(ヴィンボーデルスイクサ)
 風の魔法。相手の首を落とすのに使う。
「天の風 地の風 万有に戯れる風の精霊 巻きて巻きて針となれ なりて来よ来よ 風の針 寄りて鋼の刃とならん 風斬首斧(ヴィンボーデルスイクサ)」

・炎波動(エルドヴォーグ)
 エルドクヴァストの上位呪文。
「目覚めて来たれ風の精霊 気(ルフート)よ この屍櫃(からひつ)に満ちよ 屍櫃は毒酒の壷のごとくなれ 毒酒の壷は腑分け鳥(カラス)の卵ほどに また冥狼(ガルム)の目玉ほどにもなりて 寄りて寄りて この屍櫃を満たせ 炎波動(エルドヴォーグ)」

・炎箭(エルドクヴァスト)
 炎の攻撃魔法。微妙に詠唱が違うと炎波動(エルドヴォーグ)になるなどヴァリエーションの多い魔法。シャールヴィは途中で詠唱をかえて炎流星光(エルドシェーンスコート)という信号弾に変更したこともある。
「気(ルフート)よ この屍櫃(からひつ)に満ちよ 屍櫃は毒酒の壷のごとくなれ 毒酒の壷は腑分け鳥(カラス)の卵ほどに また冥狼(ガルム)の目玉ほどにもなりて炎宿さん 炎箭 発弾(エルドクヴァスト ゲフィーア)」 

☆か行☆
・回生呪
 王族、高位魔導士など、魔法量の多い人間が、その頭部にあらかじめ治癒呪文(クーア)の秘文字(ルーン)を刺青で施して自動回復をはかる法。魔法の強いものはこれによってほとんど不死身になる。ただし首をはねられた場合はその限りではない。

・火竜
 普通の竜よりも一回り大きく一番気性の荒い竜。

・聖短剣(グランクニーヴ)
 絶対封魔剣。ただし短剣だけに聖剣よりは弱い。魔導士から渡されたエルナ唯一の武器。

・聖剣(グランテイン)
 絶対封魔剣。かつて勇者はこれを用いて魔獣を倒した。そしてその後はノルズ山の頂上に突き立てられて魔風より世界を守っていた。エルナが魔獣の元に向かう際、再び抜かれることとなる。

・圏(クレトゥス)
 防御魔法。名のとおり球形に防御をはる。魔法だけでなく竜の炎なども防ぐことができる。完全なものほど球形に近い。上位魔法に高防御圏(ホーグクレトゥス)がある。
「守りたまえ(フォルスヴァーラ) 鬼神風神我らがまわりに(クリングメイー?) 圏(クレトゥス)」

・鬼神
 シャールヴィの二つ名

・世界(ギムレー)
 聖剣によって魔風から守られた土地のこと。

・禁呪
 文字通り禁じられた魔法。主に魔精霊法のことをそう呼ぶ。

・治癒呪文(クーア)
 傷を治す呪文。初歩的な魔法らしく、大抵のものが使える。
「敬愛なる女神エイル 慈悲深きその御心にて あわれなるこの地上の子らを救いたまえ…」

・グードランド
 女王ヴァルゲス率いる王国。女王の親衛隊(ヴァルキリヤ)と呼ばれる精鋭竜騎士や暗殺部隊ヘルモーズなどを要している。

・空馬(グリフォン)
 馬、という字が当てられているがその姿は巨大な鳥そのもの。緊急時の退避用であり、戦闘には不向き。そのかわり長く飛ぶことができる。

  ・古代魔法
 魔精霊法や封魔呪など、過去に失われてしまった強力な魔法。強力で危険なものが多いため禁呪とほぼ同義である。

・コルベイン公
 アンサズ王の側近。だがかなりの俗物で、ヴァーリの「アンサズの王位を授ける」という甘言にのり東の突撃口を開けてしまう。その後も再びヴァーリの言葉に騙され、エルナをそそのかしてレーヴァテインの封印を解かせる。レーヴァテインを前にしてその野心はさらに広がり剣を用いて世界の王となろうとするが、剣から吹きだした魔風により命を落とす。

☆さ行☆
・三国
 アーサトゥアル、アンサズ、グートランドのこと。

・魔鎖網(シエーダガーン)
 魔法による結界。

・修道会
 どこの国にも属さぬ中立組織。だが、どちらかというとアーサトゥアル寄りの立場らしい。法王を頂点とする聖職者たちの集団。修道会領内には世界樹(イグドラシル)でできた大聖堂がある。

・自由都市エイル
 アンサズと友好関係にあった都市。しばらくはアーサトゥアル軍に抵抗していたが、ある時突然謎の病が流行り街は全滅したという。実際にはおそらく魔精霊法を使われたのだろう。市民軍のため魔道士すらいなかった。

・自由都市ハルスホルト
 独自の勢力圏を持つ巨大な商業都市。ビッキの火竜により町の半分以上が火の海になる。北町と南町での対立が激しい。市長はグンナル。アーサトゥル軍に攻め込まれ併合される。

・地霊冠峰(ジュードオンクローナ)
 地中から巨大な土柱を突き出す攻撃魔法。
「大地母神ヨルズに伏してお願いする その灼熱の流れを我が手に… 地霊冠峰(ジュードオンクローナ)」

・召喚主
 召喚を行う際、召喚されたものの主となるもの。術者とは一致しない。召喚された竜は召喚主の性に似ると言う。

・召喚魔法  魔境の生物(多くは竜)を召喚し利用する方法。竜が何故人に協力するかなどは謎が多く人はただやり方のみを知って活用してるのみにすぎない。召喚した竜は3日で返すのがしきたりである。また、多くの術者と生贄、準備等を必要とする大掛かりな魔法である。
「ギツルの御世 ヴァルゲルズの御世よりの 古き契約に基づき 我らが召喚に応じたまえ」

・雷撃(ソールスラーグ)
 シャールヴィが好んで使う雷撃魔法。強大な魔力を必要とするため王族にしか使えない。暗雲を呼び寄せるため使用後は雨が降る。
「暗黒の 玉座もて来たれ風の精霊 古き御力の一つ 今その御座に来臨す 闇の王にして光の王 闇より出でて其を打ち砕く者 九十九なる光の蛇にて我が敵を打ち滅ぼせ 打て 雷撃(スート ソールスラーグ)」

・雷牙(ソールビータ)
 自分の手に雷を帯びさせる魔法。
「来たれ雷精 万物に宿りし 古き強き力 我がもとに来たりて この掌に帯びよ 雷牙(ソールビータ)」

☆た行☆
・使い魔
 使い魔法によって蘇った、いわばゾンビ。使い魔は生前の能力に加え、冥王法にて個体の瞬間移動が可能になる。また、術者が死なない限り不死身。その妄執を晴らせば生き返ることができるといわれている。

・使い魔法
 死体でいわゆるゾンビを作りそれを利用する法。一見便利な魔法であるが、使い魔法には膨大な魔法が必要な上、自分が手を下したのではない新鮮な屍が必要であるなど制約が多い。また、人を使い魔にするにはその妄執を引き受けなければならないという呪いがある。そのため、実際にはたまたま目の前で死んだ小動物をメッセンジャーがわりに使っているに過ぎない。

・転移魔法
 →ユアヴァーフォエリンの項参照。

・統魔雷剣(トウアラテイン)
 アーサトゥアルの王の剣。真の王にしか抜けないといわれている。が、王とは人の世の位階にあらず、エイリークには抜くことができなかった。剣が主として認めたのはエルナである。無限の魔力を供給するといわれているが、正確には一定空間における割合の魔法を無限時間支配できるということで、相対的に無限に供給するといえる。天空の闇の王にして光の王、雷神ソウルの分御霊、雷精ソーロッドが宿っている。

・ドヴェルグ族
 世界で最も古いと言われている一族。他の人間に比べて格段に魔法が弱い。エルナの母やシグルーンはここの出身。魔法が弱い故に古代の知識である外科手術や薬草や金属の知識に優れている。

・魔幻像(ドロームビルド)
 暗示にて人を動かす別系統の古代魔法。真には魔力は関与していないといわれ、詠唱こそが力を持つ。そのため魔法を帯びないエルナにも通じる。一度術にかかれば被術者は深き迷いのもりに落ち、二度と戻れぬ者、錯乱して自害するものなど。エルナの身代わりとなって死んだ少女がエルナに対してかけた。
「来たれ漆黒の夜の王 月の光まといて 闇の馬車を駆り 霧の彼方より その黒きマントにて この者の目を覆い 内なる深き井戸へいざないたまえ 下へ下へ 深く深く」

☆な行☆
・ニーデリの実
 カルルの好物。リンゴのようなものだろうか。ちなみに熟れる前に食べるととても酸っぱい。

・ノルズ山
 アーサトゥアル領内にある山。その頂上には聖剣が突き立っている。

☆は行☆
・光の王
 エイリークの2つ名。世界一の魔力を持つといわれる王のこと。
しかし、真の光の王の意味するところは別で、統魔雷剣の主をそう呼ぶ。真の王とは高みより見下ろしながら人を救うのではなく、深く地に身を投げ出し、疑いと憎しみに満ちた愚かな人々と共に闇のふちに下りるもの。雷撃(ソールスラーグ)の詠唱にも謳われる「闇の王にして光の王 闇より出でて其を打ち砕くもの」とはエルナのことである。

・封魔剣
 封魔呪の施された剣。主に勇者の持ち物。代表的なもので聖剣、聖短剣など。この剣を攻撃魔法に意図的に反応させると魔法と反魔法の衝突の力で威力が数十倍に跳ね上がる。

・封魔呪
 反魔法。古代魔法の一つでそのメカニズムは不明。あらゆる魔法を防ぎ、あるいは解呪する。普通どんな場合においても人間の体は魔法を帯びているが、封魔呪はこの体内の魔法にまで反応して組織を破壊する。

・大魔道士(ブレスト)
 その国において最も高い地位にいる魔導士。各国王に神の道を示すために派遣されている。常に王の側に控え、補佐としての役割も果たす。

・狂戦士(ベルセルク)
 魔精霊に感染し、好戦的な戦士に改造された人間。グードランドでは打ち首になるはずだった咎人を狂戦士として利用していた。ヴァーリは数々の狂戦士を作るが、その姿は次第に人と呼べるものではない異形の怪物となっていく。

・上級治癒呪文(ホーグクーア)
 治癒呪文(クーア)の上位呪文。

・爆瘴霧(ボルトーカ)
 ヴァーリがエルナを討つために使った呪文。教会の頂上を破壊した。
「来たれ はるか冥河(ギョツル)に厚くちこめる死の霧よ 死人の島から生まれた呪いの気(ルフート)よ この新しき贄を受け取るがいい その目玉も舌も脳も 骨の髄まで砕きて屠れ 出でよ 地獄の扉開けて 我今 焔の鍵を渡さん 爆瘴霧(ボルトーカ)」

☆ま行☆
・魔境
 魔風吹き荒れる、聖剣の守りの外の世界。魔獣がいるのもここである。唯一風読み(ヴィンレーサ)と呼ばれる職業の者たちが、独特の技術を持って、風の凪ぐ隙をぬって、古代の遺物などを拾い生計を立てている。彼らの話では魔境に取り残された人たちが怪物化して生存することがあるらしい。

・魔剣炎魔剣(レーヴァテイン)
 封魔呪を施された剣の一つ。統雷魔剣より協力といわれる世界の第3の魔法剣。自在に魔風を呼び込むという。アンサズ領内の祠に聖楯(グランシュール)と共に封印されていたが、ヴァーリにそそのかされたコルベイン公に騙されたエルナが封印を解いてしまう。ヴァーリが手に入れその力を振るう。またの名を制魔獣剣といい、この剣を魔獣の心臓(メインコンピュータ)にさし入れれば魔獣を制御できるという。

・魔精霊法
 古代魔法の一つ。我々の世界で言うウィルスのようなもの。古代にはこの法にて動植物にいろいろな変化を起こして利用していたらしい。禁呪ではあるが、戦に使われることもある。ヴァーリはこれを用いて数々の恐ろしい怪物を誕生させた。

・魔導士
 血統によらず、修道会での厳しい修行と学問によって、人並みはずれた魔法を習得したものたち。そのなかでも優れたものを高位魔導士と呼ぶ。公正な政事を行わせるため、神の道を指し示すために、各国の王のもと、また各自由都市の大聖堂に、修道会の修道士たちが魔導士として派遣されている。しかし、各国の出身者が修道会での修行を終え、魔導士として里帰りする場合が多く、神の道を説いたり、修道会の利益を図るよりは、各国のために動き、神の教えに反するはずの戦にも手を貸しているのが実情。

・魔風
 魔獣がその傷口からはきつづけている風。この風の中では肉がそげ皮膚は焼かれ、人はとても生きてはいけない。

・マルーク
 面積の単位。

☆や行☆
・闇の姫御子
 エルナのこと。魔法を全く使えないために神の加護なき呪われた姫御子としてそう呼ばれる。呪われた、という意味は広がり、戦の元凶となったことや、聖剣を抜いて世界を滅ぼすことをさす事もある。また、魔精霊法で作ることのできる魔法の無い少女のこともそう呼ぶ。

・転移魔法(ユアヴァーフォエリン)
 名のとおり、人やものを違う場所に転移させる魔法。規模によっては数十人もの魔導士を必要とする大掛かりな魔法。

☆ら行☆
・竜
 飛竜(ワイバーン)と同義

・竜騎兵
 その名のとおり、竜にのった兵のこと。竜騎士と同義。ヴァルキリヤのことを指すこともある。

・竜騎士
 竜にのった騎士。

☆わ行☆
・飛竜(ワイバーン)
 魔境の生物。空馬のように長くは飛べないが、速く飛べる。召喚に応じる竜は召喚主の身内や愛馬の生まれ変わり、あるいは竜は召喚主に似るなどいうが真偽の程は定かではない。ただ、竜が人に協力するのは戦場という餌場に行けるからともいい、営巣地に無事帰る竜が少なければ、他の竜も警戒し、以降召喚しにくくなる。また、3日で魔境に返すしきたりである。